食で症状をコントロール:クローン病者のための食事戦略

私は、21歳でクローン病と診断されて罹患歴は9年になります。
身をもって学んだ9年間の経験をもとに、クローン病患者の食事の工夫について書きたいと思います。
クローン病とは?
クローン病とは原因不明の炎症性腸疾患で、口腔~肛門までの全ての消化管で非連続性・全層性の炎症を引き起こします。
若年者に好発し、日本における罹患数は約5万人と言われており、増加傾向にあります。
私が診断されたのは21歳の頃でした。
ある時から毎日血便がでるようになり、椅子に座れないほどの痔に悩まされました。
あまりにも痔が酷いので病院に行って検査したところ「クローン病」と診断されました。
症状の改善に向けた食事の工夫
クローン病患者にとって食事はとても重要な要素です。
炎症や腸への刺激を引き起こす特定の食べ物を避けつつ、必要なカロリーと栄養を取らなければなりません。
脂質を抑えながら十分なカロリーと栄養を摂る
炎症を抑えるためには、脂質を抑えつつ炭水化物やタンパク質で十分なカロリーを摂ることが基本です。
1日に摂取すべきカロリーは次の式で計算できます。
理想体重 = 身長(m) × 身長(m) × 22
カロリー = 30~35kcal × 理想体重
30~35kcalの部分は活動量によって調整します。
私の場合は、次のようになりました。
60.6kg = 1.66 × 1.66 × 22
2121kcal = 35 × 60.6
1日に2121kcal必要になるので、これを目指して食事を選んでいきます。
脂質を30g以下に抑えるn-3 > n-6を心掛ける
脂質は炎症を引き起こす原因の一つで、1日の摂取量が30gを越えると炎症を引き起こしやすくなるといわれています。
脂肪は主にn-3系脂肪酸・n-6系脂肪酸・飽和脂肪酸の3種類ありますが、炎症を引き起こすのはn-6系脂肪酸と飽和脂肪酸です。
逆にn-3系脂肪酸は炎症を抑える効果があるという研究結果があります。
- n-3系脂肪酸:炎症を抑える
あまに油・なたね油・青魚など - n-6系脂肪酸:炎症を引き起こす
ごま油・コーン油・サフラワー油など - 飽和脂肪酸:炎症を引き起こす
牛脂・ラード・ヤシ油・パーム油・牛乳・バターなど
1日の脂質の摂取量は30gに抑え、
摂取比率はn-3系脂肪酸 > n-6系脂肪酸
を心掛けると良いでしょう。
慎重に摂取すべき食材
今までの経験で慎重に摂取すべき食材が3つあります。
何がどれくらいで毒になるかは人それぞれですが、次に挙げる食材は気を付けた方が良いと思います。
- 餅
- グルテン
- 乳製品
- 香辛料
- アルコール
餅:餅は消化に悪い部類の食べ物で胃腸に負荷を掛けます。また、腸が狭窄を起こしていたり弱っている時に食べると腸閉塞の原因になるため、控えるか、細かくして少しずつ様子を見ながら食べましょう。
グルテン:小麦粉に水を加えて寝る事でできる成分で、パスタ、ピザ、パン、うどん、菓子類に含まれているありふれた物質です。べとべととしているため、腸の粘膜を荒して炎症を引き起こす可能性があります。
私も体調によっては小麦粉製品を食べると悪心・嘔吐・下痢を引き起こすため量は控えています。
カロリー調整だったり食べたい時もあるので、そういう時は食物繊維と一緒に食べることで症状を抑えるようにしています。
乳製品:牛乳やチーズなどの乳製品は栄養豊富で優秀な食材ですが、脂質も多いため控える必要があります。また、人によっては乳糖不耐・カゼイン不耐などの場合があるので、摂取は慎重にならなければなりません。
私は乳化剤として広く使われているカゼインNaを摂取すると悪心・下痢を引き起こす体質です。ペットボトルや缶に入ったミルクティ・カフェオレ・ミルク入りコーヒーなどは飲めません。
香辛料:唐辛子・ワサビ・からしなど胃腸を刺激する可能性が高いため、摂取は控えましょう。
炎症を抑える食材・身体に良い働きをする食材
私が特に重宝している食材は次の4つです。
- 葛
- モロヘイヤ
- オクラ
- キャベツ
葛:葛湯にするとカロリーと滋養がありながら食べやすいので衰弱時の栄養補給にとても有用です。
モロヘイヤ・オクラ:モロヘイヤ・オクラは抗炎症作用があるといわれています。
再燃して喉にも潰瘍ができた時はこれらのトロトロした食材にだいぶ助けられました。
抗炎症作用があり、喉や食道・胃腸にも優しく、衰弱している時の栄養補給として最高の食材だと思います。
キャベツ:胃の粘膜の再生や、胃潰瘍の治癒に効果があるビタミンU・Kを豊富に含んでいます。
元々は薬用として輸入されたもので、「食べる薬」とも言われています。ビタミンUは別名「キャベジン」で胃腸薬として知られています。
私は胃腸が悪いときはとりあえずキャベツを刻んで食べています。
不足しがちな栄養素を補給する
クローン病患者は炎症値が健常者よりも高く脂質を抑えるという制限もあるので、不足しがちな栄養素があります。
- カルシウム:豆腐・低脂肪牛乳・ニボシなど
- ビタミン:緑黄色野菜・果物など
- 鉄:鶏肉・魚・ひじきなど
- 亜鉛:牡蠣・ニボシ・たらこ・しらす干し・かつお節など
これらも意識して摂取するようにしましょう。
摂取ができない場合は、医師や栄養士と相談のうえサプリメントの利用も検討するといいでしょう。
サプリメントの効果的な活用
食事制限をしつつ必要な栄養素を摂取することは健常者よりも難しい事です。
そこで、サプリメントという手段があります。
私も色々なサプリメントを試行錯誤して現在いくつかのサプリメントを飲んでいます。
専門家ではないため詳細な事は書けませんが、サプリメントの基本的な考え方は次の通りです。
- 足りないものを足らす
- 過ぎたるは猶及ばざるが如し
各自の病状や状況によって”適量”は変化します。
それぞれに応じて摂取する種類や量をコントロールする必要があります。
DHA・EPAサプリメントのクローン病への有効性
n-3脂肪酸は炎症を抑えるといいましたが、これにはエビデンスがあります。
通院中のクローン病患者3名に対して、n-3系脂肪酸錠(栄養補助食品 オメガスリー)を1098mg/日を4~25週間飲ませた所、3名ともCRPが減少し炎症の改善が見られたとのことです。
これらの結果から、n-3系脂肪酸の摂取が炎症性疾患の炎症改善と緩解維持に有効であることが示唆されました。
私はこの事例報告を読んでからn-3系脂肪酸のサプリを摂り始めました。
まだ効果は分かりませんが、次の血液検査が楽しみです。
ちなみにおすすめはKIRKLAND Fish Oil Omega3。
Amazonでも購入可能ですが、コストコなら2500円程度で購入できます。
CBDが炎症性腸疾患への有効性を示唆する研究がある
もう一つ気になっているサプリメントとしてCBDがあります。
CBD(カンナビジオール)とは麻に含まれるカンナビノイドのひとつです。
抗炎症とリラックス効果がありながら、向精神作用・依存性・副作用が無いことから、日本でもサプリメントとして普及し始めています。
CBDが炎症性腸疾患に有効かどうかは研究段階ですが、一部の研究では、CBDが炎症性腸疾患に対して有望な効果を示唆しています。
まとめ
クローン病患者の食事についてまとめると次の通りです。
- 1日に摂取する脂質は30g以下
- n-3系脂肪酸を摂る。サプリメントがおすすめ
- 香辛料・アルコールなどの刺激物は摂ってはいけない
- 餅・グルテン・乳飲料の接種は注意する
- 必要なカロリーと栄養はちゃんと摂る
- 葛湯・モロヘイヤ・オクラ・キャベツは消化器に優しいので重宝する
- 足りない分はサプリメントも活用する(専門家に相談)
ここに書いてあるから食べてはいけないとか、ここに書いてないから食べてもいいということはありません。
この記事に書いた食材などはほんの一例であり、私の主観的な意見も含みます。
ご自身が調べた情報に加える形でこの記事が少しでも参考になれば幸いです。
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